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2017.11.07

僕たちはこうやって映画をつくる 第2回

僕たちはこうやって映画をつくる / 三浦崇志

2007年以来、大阪を拠点に自主制作ながらコンスタントに作品を撮り続けている、日本では珍しい二人組の映画監督がいる。三浦崇志と大力拓哉。海外映画祭でも賞賛を浴びた彼らの代表作『ニコトコ島』と『石と歌とペタ』が、2017年10月14日からイメージフォーラムで日替りにて劇場初公開されることになった。自身たちの映画作りの原点やその制作過程、そして初の一般公開に至るまでの道のりについて、監督のひとり三浦崇志がゆるやかに言葉を綴る。(全3回)

 

【第1回はこちら

 

楽しくない部分を省いていったらこうなった

この連載のタイトルが「僕たちはこうやって映画をつくる」なので僕たちがどうやって映画をつくるかを書きたいと思います。

先に言っておくと「変」です。
自分たちが映画をつくる過程で楽しくない部分を省いていったらこうなりました。

まず最初にテーマを決めたり脚本を書いたりすることはありません。さあ、映画をつくるぞ、という感じでもありません。どちらかといえば日常です。

相方の大力とはだいたい週一回のペースで会っています。ただ遊ぶだけの日もありますが、そんな時でもいつのまにか映画の話をしていて、面白いアイデアが出てくればそれをノートに書き出していきます。

とにかく話せば映画製作になっていて前に転がり出します。

そしてノートがいっぱいになるころに、「もうそろそろ撮影しよか」ということになり1週間ほどスケジュールを合わせて撮影旅行に繰り出します。

この時点ではシナリオは無く、ノートいっぱいに書いたものも特に使うことはありません。

それまで散々話し合ったことに意味が無いわけではありません。次に作る映画のニュアンスをすり合わせるために必要で、撮影している時に頭の隅に共有されている状態です。

そして一日撮影したものを宿で見ながらアレコレ話し合うのですが、これを全部録音しておきます。この時の会話自体がおもしろかったら後々セリフに使ったりします。

どんな映画にするかを考えながらこれを毎日繰り返して、いろいろ試しながら撮り続けます。
撮影旅行から帰る頃にはうっすら映画のカタチがみえてきます。家に帰った後に撮りためた映像を編集しながらまた考えて、映画の構成が決まったら足りない分をまた撮影に行きます。

音楽が必要なら自分たちでつくるか友達につくってもらい、セリフも全て自分たちでアフレコしていれます。

だいたいこんな感じです。

つくりながらも正直どんな映画になるかもわからないし、映画が完成しないかもしれないという不安もあるのですが、これが現時点でのぼくたちの一番楽しい映画のつくりかたです。

行動しながら考えるということ。

ただ、これは最近のつくりかたで、はじめからこうだったわけではなく、いわゆる普通の映画のつくりかた、シナリオ書いて絵コンテ書いてロケ地を探して役者の人も使い、音も現場で録音して撮影するというやりかたも2008年製作の『僕達は死んでしまった』でやりました。

この作品はシネアストオーガニゼーション大阪(CO2)の助成監督に選ばれて制作費が出たこともありそういったつくりかたができました。

このつくりかただとシナリオ通りその日撮影するカットを決めて絵コンテ通り撮影していくのですが、それがだんだん作業のような感覚になってしまい、少ししんどくなりました。

それにロケ地で撮影の準備をしていても別のところに「あ、いいな」と思える瞬間や風景があってもそちらにカメラを向けることができないということがあり、不自由というか「なんかちがうな」と感じていました。

それにロケ地も陽の光や風の影響でロケハンした時と撮影当日では全然違った風景になるので、いいと思った瞬間に撮影したいと考えたことも大きいと思います。

完成した『僕達は死んでしまった』はいいものができたし、映画のつくりかたについて考える凄く良い機会にはなりました。

もちろんこれはこれでみんなでつくるという楽しさはありました。

そしてこの後に『ニコトコ島』を三人だけで撮影することにしました。大力、三浦の監督二人といつも映画に出演してもらっている友達の松田くん。

簡単なお話だけを考えて撮影を始めたのですが余白がたくさんあるのでその場の思いつきをどんどん足していくことができて自由で楽しく撮影ができました。このやりかたが凄くしっくりくるというか「これでええやん」って思えました。

ほとんどのカットが超ロングショットの長回しで三人とも出演しているのでカメラ側は無人の状態です。

そして『石と歌とペタ』という作品では完全にシナリオやお話も考えないまま撮影から始めました。これも三人とも出演しているのですが出演しながらカメラも持って移動するという、『ニコトコ島』よりさらに自由度が増しました。

初めてのカラー作品でもあります。

『ニコトコ島』も『石と歌とペタ』も海外の映画祭のコンペティションにノミネートされたことでこのやりかたでいけると自信がもてました。

『ニコトコ島』『石と歌とペタ』、シアターイメージフォーラムにてレイトショーで上映中です。
今しか観ることができませんので是非観ていただけたら嬉しいです。

 

(つづく)

プロフィール
三浦崇志みうら・たかし

大力拓哉と二人組監督として活動。共に1980年大阪府出身。2人は小学校からの幼なじみ。2007年に『タネ』がイメージフォーラム・フェスティバルにて入賞。第4回シネアストオーガニゼーション大阪(CO2)助成作品として、中編『僕達は死んでしまった』(2008)を製作。同年自主製作した中編『ニコトコ島』は、イメージフォーラム・フェスティバル2009にてグランプリにあたる大賞を受賞、第62回ロカルノ国際映画祭のコンペティション部門「Filmmakers of the Present」に選出される。翌年制作した、『コロ石』(2010)が、パリのポンピドゥー・センター(国立美術文化センター)で上映。『石と歌とペタ』(2012)は、ローマ国際映画祭「CINEMAXXI コンペティション部門で上映された。その後も毎年新作を製作し、唯一無二の世界を常に更新し続けている。
http://dddmmm.info/

 

フィルモグラフィー

Monologues』(34分/カラー・モノクロ/DV/2016)

ほなね』(72分/カラー/DV/2016)

今日も順調』(116分/カラー/DV/2015)

Road movie』(61分/モノクロ/DV/2014)

石と歌とペタ』(60分/カラー/DCP/2012)

コロ石』(61分/モノクロ/DV/2010)

ニコトコ島』(47分/モノクロ/DV/2008)

僕達は死んでしまった』(55分/モノクロ/DV/2008)

タネ』(50分/モノクロ・カラー/DV/2007)

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