フィルムアート社は会社創立の1968年に雑誌『季刊フィルム』を刊行して以降、この50年間で540点を超える書籍(や雑誌)を世に送り出してきました。フィルムアート社の本と読者をつないでくださっている全国の目利きの書店員さんに、オススメのフィルムアート社の本を紹介していただく本連載。今回はジュンク堂書店大阪本店で芸術書の担当をしている三浦崇志さんにオススメ本を紹介していただきました。
書店で働きながら映画を作っています。
書店歴と映画制作歴がほぼ同じで17年くらいで映画は今までに10本つくりました。
フィルムアート社は映画のつくり方の本をたくさん出版しているのでその中から紹介します。
ジェニファー・ヴァン・シル=著 吉田俊太郎=訳
B5判変型|280頁|定価: 2,400円+税|ISBN 978-4-8459-1292-6
この本が出た時は「ズルい!」と思いました。
この本に載っている技法というのはセリフやナレーションによる説明ではなく映像によって言語以上の効果を生む映画のマジックといえるものです。
それぞれの作品のシーンの写真と共にどのような映像表現をしたのかと、その効果が解説されています。
この本は映画が誕生してこれまでの映画人たちが試行錯誤してあみだした映画のマジックのタネあかしのようなものです。
僕は何百何千と映画を見て気づいたり実際に映画を作っていく中で発見していくものだと考えていたこともあり何度もいいますがこの本はズルい! とおもいました。
なんだかんだいいましたが僕は買いました。しかしこの本に載っている技法を自分の映画で使うということはありませんでした。これは諸刃の剣でもあり、この本の通りにしてみんな同じ表現になると面白くないので、これはこれとして自分の表現方法を発見することができればいいんじゃないかと思います。
新しい表現を生み出すためにもこの本は役立つはずです。
今日までの技法を知ることによって更新が可能になります。
といってもこの本は映画を作る人に限らず観る人にも是非手にとってみてほしいです。
あの映画が何故こんなにも心を動かされるのか、といったことがこの本を読めばナルホド! そんなことしていたのかともう一度観たくなるに違いありません。
他にも『マスターショット』というシリーズもあるのでそちらもオススメです。
クリストファー・ケンワーシー= 著 吉田俊太郎= 訳
A5判変形|248頁|定価:2,300円+税|ISBN 978-4-8459-1165-3
最後にあともう一冊紹介します。
『メカスの映画日記 ニュー・アメリカン・シネマの起源 1959-1971』
ジョナス・メカス=著 飯村昭子=訳
A5判| 400頁|定価:3200円+税| ISBN 978-4-8459-7406-1
「リトアニアへの旅の追憶」や日記映画を撮っているジョナス・メカスの1960年代に書かれた日記。
映画への熱量がハンパなく新しい表現にも柔軟で自分がいいと思ったものはちゃんと評価する姿勢が素晴らしいです。なんといっても映画作家としてのアンディ・ウォーホルを最初に評価したっていうのがやはり凄い。
こういう人がいると新しい表現をする才能のある人が活躍できるようになれるように思います。こんな人がもっと現れるようにこの本をたくさんの人に読んでほしいです。
そして僕の作った映画を見てください。
僕自身の映画のつくりかたについては以前フィルムアート社のウェブマガジン「かみのたね」に書かせていただいたので(連載「僕たちはこうやって映画をつくる」)読んでもらえたらうれしいです。