フィルムアート社は会社創立の1968年に雑誌『季刊フィルム』を刊行して以降、この50年間で540点を超える書籍(や雑誌)を世に送り出してきました。フィルムアート社の本と読者をつないでくださっている全国の目利きの書店員さんに、オススメのフィルムアート社の本を紹介していただく本連載。今回は青山ブックセンター本店の山下優さんにオススメ本を紹介していただきました。
新刊の案内をもらって、おもしろそうだな、どのジャンルのどこに置こうかなとあれこれ考える時間が楽しみです。特にジャンルを横断していたり、いわゆる書店のジャンルにおさまらない本の場合、勝手に試されている気になり、著者や出版社の想いや熱量を落とさずに届けなければという責任も感じますが、わくわくししています。
メイソン・カリー著『天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々』の場合、文芸、ビジネス、デザイン、ライフスタイルに置きました。時間や意志、自制心などを有効活用するための仕組みを常に意識し実行していたと、いわゆるビジネス書の視点を持ちつつも、取り上げられている人々のラインナップは小説家、詩人、芸術家、哲学者、研究者、作曲家、映画監督などビジネスマンではありません。創造するルーティンを日々続けていくことの大切さに改めて気づかせてくれます。
『天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々』
メイソン・カリー=著 金原瑞人・石田文子=訳
四六判|384頁|定価1,800円+税|ISBN 978-4-8459-1433-3
当店の2017年年間ランキングの上位に入るほど多くのかたに手に取って頂けた、水野祐さん著『法のデザイン 創造性とイノベーションは法によって加速する』の場合、思想、デザイン、ビジネスに置きました。法の機能を規制として捉えるのではなく、物事や社会を促進・ドライブしていくための潤滑油のようなものとして捉える考え方、リーガルデザイン。法だけではなく、ルールは自分たちで作っていく、能動的に、また捉え方を変えると視野が開け、見えてくる景色が異なってくることに気づかせてくれます。現在も売れ続けているロングセラーです。
『法のデザイン 創造性とイノベーションは法によって加速する』
水野祐=著
四六版/ソフトカバー|344頁|定価 2,200円+税|ISBN 978-4-8459-1605-4
ロングセラーといえば、ブレイク・スナイダー 『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』。こちらは脚本マニュアルという専門書ですが2010年刊行以来、続編とともに売れ続けています。
ブレイク・スナイダー=著 菊池淳子=訳
A5判|264頁|2200円+税|ISBN978-4-8459-1056-4
世の中の流れは一層早くなっていると感じていますが、新刊とともに、どれだけお店ならではのロングセラーを作っていけるかが書店の役割にして、生き残っていく方法のひとつとして考えています。1冊でも多くロングセラーを作れるよう、大切に売り続けていきたいです。