たこ焼き屋さんには、川を渡らないといくことができないのだ。あまりに繁盛しているので、専用の木の舟と案内人がいるほど。霧に覆われた川を渡っていくと歌が聞こえてくる。たこ焼き屋さんのBGM。
しゃららららうぉううぉう
しゃららららうぉううぉう
カーペンターズの「イエスタデイ・ワンス・モア」を口ずさみながら、妹とみずはちゃんがたこ焼きをひっくり返していく。
「おーーい」
と私がいうと、舟から降りたばかりの私の元に妹とみずはちゃんが駆け寄ってきて抱きしめられた。たこ焼きくさかった。
ふたりをぎゅーっとしながら、そういえばいたな、と私は思った。むかし、カーペンターズのものまねばかりしていた友だちがいた。あのひとたち、どうしてるんだろう。腕のなかで、気がつくと私も歌っている。しゃららららうぉううぉう。
ふたりはたこ焼きをラップに包んで何十個も持たせてくれた。
私は旅の途中だった。そのことだけがわかる。
どうしてここにきたのかも、どこからやってきたのかもわからない。
でも、どこかへいくのだ。
私の幽霊に会ったあと私は、気がついたらこうしていた。